前回、こちらの記事で自身の学部時代の研究生活について触れました。
今回は晴れて大学院生となった私の研究生活についてです。
「大学院生の生活、気になるー!!」って人や「大学院進学を考えています」という人に向けて綴っています。ぜひ、参考にしてみて下さい。
大学院生活の前に
院は違う大学の研究室へ行くことにした
私は卒業研究を行った大学とは違う大学へ進学し、院生活を送りました。
理由は以下の通り
- 実験をとにかく沢山したかったから
- 研究分野を変えてみたかったから
研究というものに触れて 1番強く思ったことが、「制限されることなく実験を行い、研究を進めたい」というものでした。学部時代の研究室は割り当てられる研究費はあまり多くないのに、生徒の数は多いところでした。そのため、一人当たりが行える実験には制限がありました。
例えば再現性を取るためにもう一度同じ実験を行いたいと思っても予算の都合上、行えないもしくは先生と要相談といった具合です。失敗できないというプレッシャーも結構強かったです。この反動でか「院ではのびのび実験ができる環境がいい!」と思うようになりました。
また、これは私の性格の問題なのですが、「次の研究は新しいことがしたい!生物という大枠は変えないが取り組む分野は変えたい」と思いました。生物といっても、その中身は様々で、遺伝子学、発生学、分子生物学、生化学など多様な分野があります。この分野を変えるだけで研究はガラッと変わります。
人によっては着手した分野を極めたいという方もいるのでしょうが、私は極めるよりも幅広くやってみたい性分だったため、違う大学の院試を受験することにしました。
卒業研究と院試勉強を並行する
院進学を決意してからは卒業研究と並行して院試験の勉強も行いました。また、進学はするが院は変更する旨は決断してすぐに指導教員の先生に伝えました。ここは大事です。ここを怠ると場合によっては先生との関係が悪化しますし、卒業研究にも支障がでます。指導する先生の立場で考えたら教え子が何の知らせもなく、勝手に違う研究室へ進学するという状況は、おそらくいい気はしないと思います。指導するからには、自分の研究室に残って研究を進めて欲しいという気持ちは、大なり小なり持たれていると思います。
それらを踏まえた上で、先生へ進学の旨を伝えた後は、研究も実験も人一倍情熱を注いで行いました。院試勉強を理由にして、肝心の卒業研究を疎かにしたくなかったからです。ある意味意地でやりきりました。決意は行動でしか示せれません。とは言え、さすがに院試験1週間前は研究をストップして、勉強に集中しました。
幸い、院試験の内容は指定の専門書から出されることが分かっていました。そのため、早くからその専門書を購入して、隙間時間にひたすらインプットをしていました。また、進学する友人も何人かいたので、時間が合えば図書館や自習室に集まって勉強し、互いにモチベーションを保てるように努めていました。
院試では、ペーパーテスト以外に現時点での卒業研究内容をレポートにして提出し、その内容について面接をするという項目もありました。ここに関しては卒業研究を指導して下さっている先生にお願いし、協力していただきました。先生にはかなり苦労をかけたと思います。本当に感謝してもしきれません。
モチベーション維持、先生の協力、そして己の意地の甲斐あってか無事に院試験に合格しました。そして、学部卒業と同時に新天地での大学院生活をスタートさせることとなりました。
大学院生活のスタート
まずは新しい環境に自身を慣らす
学部とは全くもって分野も勝手も違う研究室に行ったため、最初の3ヵ月間はそこの環境に慣れることに注力しました。
注力した点は以下の通り。
- ボス(研究室の教授)はどんな性格の人なのか
- 研究室の雰囲気はどのような感じなのか
- 進捗ミーティングはどれぐらいの頻度で行われるのか
- 論文紹介が回ってくるタイミングおよび頻度
研究室の運営はそこの教授(私はボスと呼びます)によって様々です。裏を返せばその研究室の覇権はその研究室のボスが握っているということです。そのため、自分が進学した研究室のボスについてある程度把握することは研究生活を送る上で必須だと私は思っています。特に「ボスの地雷はどこなのか」は真っ先に内部の人や先輩に聞きました。流石に入学早々に地雷をぶち抜きたくはなかったからです。そんなことをしたら私の研究生命に関わることは間違いないです。
あとは進捗ミーティングや論文紹介が回ってくる頻度と順番を把握することも大事です。理由としては、実験の進行具合や論文まとめを調整するための目安にできるからです。自分の番が近いのに何も結果が出ていなかったらミーティングの意味がなくなってしまいます。そして、研究室のメンバーの貴重な時間を無駄に使ってしまうことにもなります。そんな状況になったら目も当てられないです。恐ろしや。
以上の点を意識して過ごしたため、結構気を使うことも多く、この3ヶ月間は精神も体力もかなり疲弊した記憶があります。今となってはいい思い出です。ちなみに、この経験は社会人になった今でも活かせているので結果オーライです。
研究分野に関する勉強をした
分野を変えたので、言わずもがなその分野に関する勉強をしないと研究についていけません。勿論、分野を変えなくても勉強はするべきです。割と物理的な内容を伴う研究室でもあったため、物理の勉強をしなければならない状況になりました。ちなみに、物理は学部時代に単位取得のためだけに齧った程度のものです。中高時代は生物、化学専攻でした。完全に研究費が潤沢にあるということだけで研究室を選んだ私の思惑が裏目に出た結果ですね。いやはや、自業自得ですな。
ここに関しては先輩やボスに勧めていただいた専門書や論文を読むことで知識をカバーしていきました。細部の詳しいことまでは分からないけど、ふわっとなら分かるよ程度までにはなったかなと思います。
基本的には自分が携わっている分野の論文を読むことが一番の勉強になると思います。読んだ論文の内容は自分の研究に活かせるし、分からない箇所は専門書等で調べて理解するという癖が付くからです。進学を考えている方は学部生のうちから論文を読んで慣れておくといいと思います!
とにかく実験をしまくった
これでもかっというくらい実験をしました。ここで学部時代の願いだった「制限されることなく実験を行う」は存分に叶えました。心置きなく実験をさせて下さったボスには本当に感謝です。
今振り返ってみると、きっと自分は研究というより実験が大好きだったんでしょうね。実験を思いつく限り片っ端からやっていったので、データは膨大な量となり、まとめるのに大変苦労しました。ここに関しては学部時代から全く進歩していない点です。ちなみに、実験に関してはボスに提案し、許可を取った上でやり散らかしました。まさしく、研究費が潤沢にあるからこそ、させて貰えたことです。
研究費はある程度大事
研究内容やテーマは勿論大事ですが、やっぱりお金も大事です。こんなお話、身も蓋もないことを言うようで恐縮です。でも、内容を深堀するには実験をせざるを得ないので、自ずとお金もかかります。使用する試薬や機器には目玉が飛び出るほどのお値段のものが多々あります。そのため、当初は震えながら実験をした覚えがあります(とは言え、後に慣れてきてしまうのですが… 笑)。
ある特定の研究分野に確固たる拘りがある方はその拘りに従って、研究室を選び、その扉を叩くことをおすすめします。ですが、私のように特に拘りはないけど新しい分野に取り組みたいという方や実験を存分に行いたいという方は研究費を調べてから研究室を決めるという方法もあります。
研究費の調べ方は以下の方法があります。
- 「科学研究費補助金(科研費)データベース」を利用する
- 気になる分野の研究室のメンバー構成を調べる
科研費データベースでは科研費を使用して行われた研究を分野問わず調べることができます。また、気になる研究室のボスがどれだけの研究成果をあげているかも調べることができます。
研究室のメンバー構成を調べる際は学生以外の人たちの有無に注目してみて下さい。学生以外にポスドクや技術補助員の方を雇用している研究室はその人たちの人件費を払えるだけのお金を持っている可能性があります。
しかし、これらはあくまで目安なので、妄信するのは厳禁です。自身がそこの研究室に適しているかは入ってみないと分かりませんし、研究内容についていけるかは己次第です。充分に注意して下さい。
研究は楽しいけど、その先は本人次第
院での研究は修士なら 2年、博士まで進むならそれプラス 3年とそれなりの期間を設けて打ち込みます。そのため、学部の時よりも 1歩も 2歩も踏み込んだ内容を知ることができるし、自分の手で分からないことを解明しているという実感を強く得ることができます。これらができただけでも院に進学して良かったと私は思っています。
私は修士号を取ると同時に就職しましたが、それでも全力で研究に充てられたこの 2年間は最高に充実した期間でした。逆に期間を決めて取り組んだからこそ充実できたのかもしれません。また、先生や周りの環境に恵まれていた点も理由の 1つだと思います。
私自身、今でも研究は好きですが、その度合いはアカデミーに残ってそれでご飯を食べていく覚悟を持てるほどではないです。それは修士まで進んでみてはっきりと知ることができました。院へ進学した上でさらに残って研究を続けるか否かは、自分と要相談して決めることをおすすめします。突き詰めていくことを楽しめるかどうかは本人の気持ち次第です。残念ながら、私にはちょっと無理でした。
以上が私の大学院生活の一部始終です。ざっとしたものではありますが、ガイドラインになれたら幸いです。